「忘れられなかった名前 オルクセン王国の怪獣戦争 短編 野生のオルクセン②」

 「ですから、困ります。」


国王官邸副官部部長・ダンビッツ少佐はここ数日やってくる来客に困っていた。


「どうかしたのか?」

そこにディネルースが丁度官邸内の見回りをしており、対応しているところを通りがかった。


「これはディネルース少将!こちらの方がどうしても国王官邸図書館で探しものをしたいとおっしゃっていて・・・」


国王官邸図書館、すなわちオルクセン国王グスタフが作らせた彼専用の部屋だ。

そこには彼以外滅多に使用を許可されることはない、ディネルースを除いては・・・・


「図書館は国王専用の部屋です、一般の方に使用していただくわけには参りません。」

「でしたら本を探していただくだけで結構です、星を喰らう龍についての書かれている書物です。」


様子を伺うとどうも来客の人間の女性はひどくおびえているように思えた。

何かを恐れている・・・


「少佐、彼女と少し話をしたい。」


ディネルースは女性を自らの官邸執務室に通した。

「さぁ、飲み物でも飲んで落ち着いてください。」


女性は出された飲み物に口をつけると自然と語りだした。

「私、大学でこの星の歴史を勉強しているのですが最近妙な夢を見るんです?」

「夢ですか?」


そして女性は夢の内容を語りだした・・・

そこはこの星とは違う星・・・金星というらしい

金星ではオルクセンやほかの国とも違う文明の発達をしているようだ。

しかしその文明はもはや存在しない


何故なら大きな三首の龍によって金星の文明は滅ぼされてしまい星自体も死の星となってしまったのだ。


「ここまで来ると夢とは思えないほどはっきり覚えているのです、私自身がまるで体験したような・・・」


それを聞いてディネルースは似たような話を思い出した。

これは国王グスタフの事だ。

彼は別世界からの生まれ変わり、今はオークだが元は人間である。

彼も少しずつ前世の記憶が蘇ってきて今のいたるのだ。


(もしかすると彼女の夢は前世の彼女自身が経験したものなのか?)


「この夢が毎日のように繰り返されるんです。まるで警告しているかのように・・・もしかしてあの三首の龍がここにも現れるのではないかと思って色々調べていたんです。この星に伝わる伝承に空から来た龍の話があるのにそれについて詳しく伝えられている資料がないんです。もしかすると、ここの図書館にあるのではないかと・・・」


一通り話を終えた後に女性は国王官邸を後にした。

事情は分かったものもそれでも国王専用図書館の使用を許可するわけにはいかなかった。

すると彼女を部屋の窓から見送っていたディネルースの部屋のドアがノックされた。


「盗み聞きをしていたのか?」

「いいや、たまたま部屋の前を通ったら二人の話声が聞こえてきて・・・済まなかった。」


入ってきたのは国王グスタフだった。

「話を聞いていたなら、彼女の話をあなたはどう思う?」

「確かに私と同じ経験をしているようだ、だが私が気になるのは空から来た龍の話だ。残念だが私の図書館にもそういったことが伝えられている資料はない。」

「あの図書館ならどんな言い伝えもありそうに思えたが・・・」

「正確に言えばその伝承について書かれたかつて存在していたであろう資料を私が手に入れる前に破棄されたということだ。過去の人々はあれの存在を忘れようとしていたのかもしれない。」

「ならばその龍は存在したと・・・」


その後、あの女性は再び夢を見た。

その夢にはあの龍の名を叫ぶ人々の声がはっきりと聞こえた。

もしかするとこの星の人々が忘れようとしていた名前を・・・


「キング・・・ギドラ」