「オルクセン王国視察のある陸軍大将 アンファングリア旅団お披露目式」 野生のオルクセン①
星暦八七六年の七月
オークの国「オルクセン王国」で新部隊アンファングリア旅団のお披露目式典が行われることになった。
国王グスタフは勿論、オルクセン軍関係者、各界の要人、そして他国の外交官なども招待されていた。
その中で東洋の島国から来たものもいた。
「閣下、こちらです。」
オルクセン国での大使館一等書記官「青山」に案内されてきた軍服姿の男。
彼の名は山下、はるばるオルクセン王国視察の為にやってきた陸軍大将である。
そのそばには護衛もかねて佐伯陸軍大尉も同行している。
「閣下、ちょうどオルクセン視察の時に新部隊のお披露目に立ち会えて幸運でした。」
山下は青山に案内された席についた。
「うむ、それに先ほどの料理もとってもうまかったぞ。オルクセンの国民は良い王に恵まれているようだ。」
先ほどの会場で出された料理を堪能した山下はその味に大変満足しているようであった。
「閣下、そろそろ来ます。」
オルクセン国歌「オルクセンの栄光」が流れる中、アンファングリア旅団が隊列を組んで式典会場にやってきた。
アンダリエル少将を先頭に騎兵、山岳猟兵、山砲大隊、工兵と編成された黒エルフの部隊その華麗で優雅な姿を見せてきた。
「美しいですな。」
佐伯大尉はエルフたちの姿に鼻を伸ばしているようだった。
しかしそう思っていた矢先に・・・
【アンファングリア】
彼女たち、アンファングリア旅団の歌だ。
これには歌詞があり、佐伯大尉はある部分を聞いて戦慄した。
「とっとと喰い殺させろ白エルフどもを!」
「佐伯大尉、油断していると彼女たちに喰われてしまうぞ。はははははは!」
(閣下は何もおっしゃらないが、これは明らかにエルフィンドへの敵対の意思だ。あの国の行った愚行をこれでもかと世界に見せつけた。)
青山がこの式典に隠された意図を察していると山下は先ほどまでの笑みを一旦おさめ、真剣な表情に戻った。
「この国の王は油断ならないぞ。敵にしたら大変なことになる。」